専門医インタビュー
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人工股関節置換術後のレントゲン
リハビリは、一般的には手術の翌日から始めます。人工股関節を長持ちさせるためにリハビリは大変重要で、太ももやおしりの筋肉だけでなく、腹筋や背筋など、姿勢を保持するための体幹も鍛えていきます。体幹がしっかりしていれば、股関節への負担は小さくなります。術後1~2日は傷の痛みが気になる人もいますが、日数の経過とともにどんどん和らいできます。特に、関節包靭帯を温存した手術では、術後の痛みが軽いのが特長です。
通常の歩行訓練や階段昇降のトレーニングに加えて、スポーツ復帰を前提とする人はスポーツリハビリに取り組むこともあります。スポーツリハビリでは、可動域やインナーマッスルの強さなどを細かく測定し、この部分の動きが硬い、この筋肉が弱いなど診断した上で、リハビリの専門家のもと徹底して鍛えていきます。
なお、侵襲が小さいほど、退院までの期間は短くてすむ傾向にあります。筋肉と関節包靭帯を温存した手術では、5日程度で歩行が安定し、中には退院できる人もいます。しかし、回復のスピードは患者さんそれぞれです。ご自身の股関節の状態に合わせながら、退院に向けてリハビリを進めていきます。
関節包靭帯を切らない手術では、骨折に気をつけていれば、動きの制限はありません。関節包靭帯を残すことで、曲げたり伸ばしたりする動きに骨盤が連動し、動作が安定します。関節包には、位置覚といって体の各部分を感知する感覚があるので、患者さんも「この動きをしても私は大丈夫」というのが体で感じられて、不安を感じないようです。バレエ教室の先生が手術を受け、術後に仕事復帰した例もありますが、バレエで足を高く上げるような動きは、股関節の可動域の広さだけでなく、骨盤がスライドすることで成り立つものです。
激しいスポーツについては推奨しませんが、中には再開を望まれる人もいます。そのような人には、人工股関節が摩耗する可能性があることをお伝えした上で、無理のない範囲で気をつけて行ってもらいます。
痛みに悩んでいるのであれば、とにかくまずは整形外科を受診されることをお勧めします。変形性股関節症をめぐっては、どんどん治療方法が進化してきて、将来的にはより治療の選択肢が広げられると思っています。また、人工股関節の手術もますます低侵襲化しており、患者さんの満足度の高いものとなっています。「もっと早く手術すればよかった」「今では手術をしたことも忘れている」といった喜びの声をいただくこともあります。
人工股関節は、野球に例えるならクローザーのような存在だと思います。手術を受けられる年齢は、最近では40~50代から、全身状態がよければご高齢の患者さんまでと幅広いです。また、症状がひどく悪い場合でも適応となるケースが多いため、最後に出てきてピンチを抑えてくれる信頼あるピッチャーのようなイメージです。治療を避けてつらい生活を送るのはあまりに惜しく、何がご自身にとって本当に大切なのかを考えてみてほしいと思います。
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