専門医インタビュー
愛知県
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人工股関節置換術は、日本では40年以上前から行われてきており、今日では一般的な手術として定着してきています。長い歴史の中で性能や手術の技術はめまぐるしく向上し、最近では40~50代の患者さんでも手術治療を選ぶ人が増えているそうです。今回は、「人工股関節の手術はより低侵襲になり、痛みの軽減や早期の社会復帰が可能であるなど、患者さんの期待に十分応えられるようになってきました」と話す藤田 医科大学 ばんたね病院の金治先生に、股関節の治療について伺いました。
股関節に異常がみられる
レントゲン
股関節の痛みが原因で、日常生活やご自身が大切にするスポーツ、仕事などの社会的活動に支障を感じるようであれば、まずはかかりつけの整形外科への早めの受診をお勧めします。そこで必要であれば薬を処方してもらい、リハビリテーションを進めていくのが一般的な流れです。それでも痛みが改善せず、レントゲン画像で異常が認められるような場合は、一度大きな病院などを受診してもよいでしょう。
診察時にはまずは患者さんの話を伺い、痛みの性質・性状、日常生活への支障の度合いを問診します。実際に歩いてもらって目視で症状を確かめたり、触って痛みがあるかどうか、可動域がどうかなどを確認します。その上で、レントゲン検査やMRI検査、超音波検査による画像診断を行います。股関節に痛みがあっても股関節が悪いとは限らず、腰椎や膝関節から来る痛みではないかなども確かめる必要があります。中には、外反母趾のために体重が外側にかかり、股関節に痛みが出るようなケースもあります。
正常 発育性股関節形成不全
変形性股関節症という軟骨がすり減っていく病気が多いですが、変形性股関節症を引き起こす原因はさまざまで、それを見極めて治療方針を決めていくことが大切です。
特に多いのは、発育性股関節形成不全が変形性股関節症に発展するケースです。発育性股関節形成不全とは、大腿骨(太ももの骨)の先端にある骨頭に対して臼蓋(骨盤の骨)のかぶりが浅いなど、股関節が正常に発達していない状態を指します。発育性股関節形成不全は、乳児検診で見つかって早期に治療されることもあれば、そこでは発見されずに中学・高校生になってスポーツ時などの痛みが原因で見つかることもあります。または、ずっと気づかないまま大人になり、40代以降に発見されることも少なくありません。
そのほか、特発性大腿骨頭壊死症や関節唇損傷、ペルテス病(小児期に起こる大腿骨頭への血流障害)、大腿骨頭すべり症(成長期に大腿骨頭にずれが生じる病気)なども変形性股関節症につながりえる疾患です。
保存療法(手術以外の治療)を続けているものの、安静時にも痛みを感じる、歩行や階段の昇り降りなど日常生活の動作で痛みが強いといった状況であれば、一度手術について考えてみることをお勧めします。
変形性股関節症には前期・初期・進行期・末期という病期がありますが、最近では初期~進行期でも手術を希望する患者さんもいます。「自分がやりたいことを再びできるようになりたい」という積極的な理由が多いのが印象的です。例えば、60歳で股関節の痛みが原因で好きなゴルフができなくなり、左右両脚で変形の進行が認められたため、両脚同時に人工股関節の手術をし、その3カ月後にゴルフを再開された患者さんもいます。
変形性股関節症は手術を先送りしても症状が改善するものではありません。いずれ手術が必要なことが強く予測されるのであれば、早めに受けたいと考える人は少なくないようです。人工股関節の手術は数十年の歴史の中でめまぐるしく進歩し、その成績も向上して、そうした患者さんのニーズに応えられるようになってきました。
多くの人は事前にインターネットなどで情報収集をされますが、中には10~20年前の古い情報をもとに手術に不安を抱えている患者さんも見られます。現状に即した正しい知識を得てほしいと思いますし、医師としてもそうした情報発信のあり方を考えていかなければならないと感じています。
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