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専門医インタビュー

選択肢が広がる股関節の痛みの治療 我慢せず早めに専門医に相談を

藤井 英紀 先生

東京都

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所属学会:日本人工関節学会評議員、日本股関節学会評議員、東日本整形災害外科学会評議員
専門:股関節外科

この記事の目次

日常的に続く股関節の痛み。そのうち治るだろうと放置していませんか。医療技術の進歩などにより、今は運動療法のような保存的治療から手術まで、多様な選択肢の中から個々の患者さんに適した治療が選べるようになっています。詳しい話を東京慈恵会医科大学附属病院の藤井先生にお聞きしました。

股関節の痛みの主な原因を教えてください

寛骨臼形成不全

股関節は、寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれる骨盤のくぼみに太ももの骨(大腿骨(だいたいこつ))の先端の丸い部分(骨頭(こっとう))がはまり込む構造になっています。この骨盤のくぼみが生まれつき浅い状態を寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)と言い、変形性股関節症の最も多い原因となります。
寛骨臼形成不全があると、寛骨臼の縁を包む関節唇(かんせつしん)が損傷を受けやすくなるため、それまでは痛くなかったのに急に股関節に痛みを感じるようになった場合は、関節唇損傷が疑われます。症状が進むと、だんだん軟骨がすり減っていき、変形性股関節症に進行することもあります。
このほか、寛骨臼形成不全とは逆に寛骨臼が骨頭に被りすぎていたり、大腿骨が通常よりも太くなっている部分があったりして骨同士がぶつかり合うことで、関節唇や軟骨の損傷を引き起こす大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)があります。大腿骨寛骨臼インピンジメントは、ここ10年程度で知られるようになった疾患であまり知られていないかもしれませんが、股関節痛が生じることもあり、進行すると変形性股関節症の原因になります。

痛みを感じたらどのタイミングで受診したらよいのでしょうか?

車の乗り降りをする時だけ痛い

歩いていて急激に股関節が痛くなる、しゃがんで作業をしていて立ち上がった時に急に痛くなる、あるいは車の乗り降りをする時だけ痛い、といったことが月に何回もある場合は、一度、医療機関を受診してみることをお勧めします。整形外科では、診察で痛みの原因を探ったり、X線画像を撮影して骨の形がどうなっているのかを確認することで、病態を把握して診断します。必要があればCTやMRIも撮影した上で、保存的治療や手術など、様々ある治療法の中から、その患者さんにとって適切と思われる方法を医師と一緒に選んでいくことになります。治療開始時期が早ければ早いほど、人工股関節ではない、保存的な方法で治せる可能性がありますので、その機会を逃さないためにも、是非、早めの受診を心がけていただきたいと思います。

股関節唇損傷の場合、日常生活の改善で痛みは軽減しますか?

ローソファーに深く座って立ち上がる時に痛い

関節唇損傷の場合は、特定の動作によって痛みが生じるので、生活様式の見直しで痛みが改善することがあります。例えば、タクシーの乗降時に痛むのであれば、その際の動作を小さくする、ローソファーに深く座って立ち上がる時に痛いのであれば、そのソファーに座るのを止めるか、浅く腰掛けるようにするという改善です。患者さんご自身に痛みが出る動きをチェックしていただき、その動きをなるべくしないように注意してもらいます。2~3週間程度、徹底して続けると、断裂していた関節唇の傷が塞がって痛みが改善することがあります。
逆に、こうした対策をせず、動作のたびに傷が開いたり閉じたりを繰り返していると、自然な回復は望みにくくなります。


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