関節治療の専門医に聞いてみました!

第337回 “肩が痛い”“腕があがらない”原因と治療法を知って改善を目指しましょう

ドクター
プロフィール
資格:日本専門医機構認定整形外科専門医
専門:肩関節
エリア 愛媛県タグ
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大前 博路 先生

腱板断裂の場合、どのような手術を行うのでしょうか?

関節鏡視下腱板修復術

関節鏡視下腱板修復術

65歳未満の若い方を中心に、内視鏡を使って腱板を修復する「関節鏡視下腱板修復術(かんせつきょうしかけんばんしゅうふくじゅつ)」という手術が行われています。手術では、1cmくらいの傷口3、4か所から内視鏡(小さいカメラ)と手術器具を挿入します。カメラで確認しながら切れた腱板を元の位置まで引っ張ってきて断裂している部分を塞ぎ、アンカー(糸が付いた器具)を使って固定します。腱板を修復して炎症を起きにくくすることで痛みの改善を目指す治療法です。手術は一般的に1~2時間程度で終わり、入院期間は10日程度です。この方法は、ご自身の腱を使っているので手術後に細菌が付着したり感染症を起こすリスクが他の手術と比べて少ないという長所があります。また傷口も小さく、体への負担が少ないのも特徴です。ただし、手術後1か月間は装具で患部を固定しなければなりません。若い方であれば1か月固定して特に問題になることはないのですが、高齢の方の場合は長期間固定をすると、そのあと患部が動かしにくくなったり筋力が落ちたりして回復に時間がかかってしまうこともあります。また手術後3か月は腱板が再断裂する可能性が高く、万が一再断裂が生じると再手術が必要となることもあります。

変形性肩関節症の場合、どのような手術を行うのでしょうか?

人工肩関節置換術

人工肩関節置換術

65歳以上の場合は、「人工肩関節置換術」(じんこうかたかんせつちかんじゅつ)が選択肢となります。これは傷んで変形した関節の表面を取り除き、金属などでできた人工関節に置き換える手術です。傷んでいる部分を置き換えるので、除痛効果に優れています。手術に要する時間は一般的に2時間程度で10日程度の入院が目安になります。手術後は1か月ほど装具で固定したあと、リハビリを行います。従来の人工肩関節置換術は、変形性肩関節症の患者さんに広く行われていますが、「腱板が機能していること」が適応条件になります。そのため、高齢で広範囲腱板断裂をお持ちの方、腱板断裂性関節症の方については、これまで人工関節の手術を受けることができませんでした。このような患者さんに対し、新しく導入されたのが「リバース型人工肩関節全置換術」です。

リバース型人工肩関節全置換術とは、どのような手術ですか?

リバース型人工肩関節全置換術

リバース型人工肩関節全置換術

従来の人工関節は肩の解剖にあわせて上腕骨側が骨頭(こっとう)、肩甲骨側が受け皿のようなデザインになっています。リバース型の人工関節は、この骨頭と受け皿が逆(リバース)のデザインとなっていて、上腕骨側が受け皿、肩甲骨側が骨頭となって機能します。本来、人間の肩があがるには、腱板と外側にある三角筋(さんかくきん)が必要ですが、リバース型のデザインは関節が安定する位置が従来のデザインとは異なり、腱板が機能していなくても、三角筋の力を使って腕をあげることができるのです。手術時間や入院期間は従来の方法とほとんど変わりません。
リバース型人工肩関節全置換術の適応として多いのは、腱板が切れて機能しておらず腱板断裂を放置したために骨同士がこすれて軟骨が変形した「腱板断裂性関節症」。次に、修復できないくらい広範囲で腱板断裂が生じている「広範囲腱板断裂」です。なおリバース型人工肩関節全置換術では、原則65歳以上であること、腕をあげられないなど適応となる基準が設けられています。さらに、執刀する医師についても腱板断裂の手術を50例以上、人工関節の手術を10例以上執刀している、特別な講習を受講しているなどの厳しい基準を設けていて、手術を受けられる施設が限られています。

手術における合併症などのリスクについて教えてください

人工肩関節置換術で特に注意が必要なのは感染症です。糖尿病があったり、リウマチの治療で免疫抑制剤を使っていたり、透析をしていたりして、細菌に対する抵抗力が落ちていている方に対しては手術を慎重に行う必要があります。糖尿病がある場合は、正常な糖尿値をコントロールできるようになってから手術を行うことが多いです。感染を抑える抗生剤の使用についてはいろいろな議論がありますが、感染のリスクがある場合は、内服の抗生剤を数日間継続することもあります。このような対策をしたうえで感染が生じた場合は、再手術になります。再手術では人工関節の入れ替えを行いますが、初回の手術の時点で適切なサイズの人工関節を選択することで、万が一再手術になってもより少ない負担で手術を進めることができます。こうした対策も含め、手術前の計画がとても大切です。


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