専門医インタビュー
北海道
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変形の進行を抑制しながら痛みを軽減し、日常生活を問題なく送るための手助けを行う保存療法と、関節の変形や筋肉の拘縮(何らかの原因で動かしにくくなった状態)など痛みの原因を根本的に取り除く手術療法があります。
保存療法は主に3つあります。一つ目は運動療法(リハビリ)です。足の指のストレッチや足の指じゃんけん、床に置いたタオルを両足の指を使ってたぐり寄せる運動などが変形の進行予防に有効です。足指のストレッチ・運動は、変形して硬くなった関節をほぐしたり、筋肉を付けたりすることで、指を正常な位置に保つことが目的です。
毎日継続することが大切で、最初はうまくできなくても根気よく行うことによってできるようになります。
二つ目は装具療法です。外反母趾の進行に伴って、足にかかる体重の分布などが変わってくると、足のバランスはどんどん悪くなります。それを食い止め、歩くときに足裏にかかる圧力を分散させる足底板(インソール)を使います。個々の足に合わせたオーダーメイドのものを使うのが基本です。市販の足底板では微妙にサイズが合わないことも多く、合わない足底板はむしろ変形を助長する心配もあるので注意するようにしましょう。
三つ目は靴選びです。何よりも窮屈な靴は履かないことが大切です。靴は先が細くなく、つま先に足の親指の先を動かせる余裕があり、足の甲がひもなどでしっかりと固定でき、かかとも浮かないタイプのものを選ぶようにしましょう。変形が進んでくると、足に合う靴を探すのは難しいですが、靴選びの専門家であるシューフィッターのいるお店で助言をもらうことをお勧めします。
変形が重度の場合や保存治療で痛みが軽減されず、日常生活に不便を感じるようであれば、手術療法が考慮されます。
外反母趾の手術方法にはさまざまありますが、一般的なのは、親指の第一中足骨(ちゅうそっこつ)という骨を切って変形を矯正する「骨(こつ)切り術」です。骨切り術も骨を切る位置や角度によりその方法は200種類以上あるといわれていますが、基本的には親指の内側にずれている部分を元の位置に戻すよう矯正します。症例によっては、周りの筋肉を一部切離するなど、足指の筋肉が外反母趾を増強するよう働くのを防ぐための施術を組み合わせることもあります。矯正した部分は、金属でできたインプラントで固定します。外反母趾に対する骨切り術の歴史は古く、長期的に安定した治療成績が報告されていますが、近年、手術の技術に加え、インプラントの性能が急速に進歩したことで、患者さんへの身体の負担の少ない低侵襲(ていしんしゅう)な施術と術後早期の機能回復が見込めるようになっています。
疼痛管理によって術後に激しく痛むようなことはほとんどなく、多くの患者さんが手術をした翌日からリハビリを開始します。手術内容と病状の程度により差はありますが、入院期間は7~10日程度です。
痛みが強くて歩けない、眠れない、やりたいことができないなど日常生活が困難になったら手術を検討するタイミングといえるでしょう。
手術をするかどうかは、変形の程度だけで決めることではありません。治療の選択は、患者さんが外反母趾によって特に何に困っているかということが重要です。たとえ中等度以上の変形があっても、痛みがなく患者さんが何も不自由を感じていないなら、無理に手術を受ける必要はありません。患者さんが治療に何を求め、今後どういった生活を望んでいるかなどをじっくり主治医と話し合い、患者さん一人ひとりの状態と要望に合った治療法を見つけることが何よりも大切です。
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