メニュー

専門医インタビュー

肩が痛む、腕が挙がらない 歳だから仕方がないと諦めず肩の専門医と一緒に治療法を探しましょう

この記事の専門医

福田 昇司 先生

高知県

プロフィールを見る

日本整形外科学会専門医

この記事の目次

腱板断裂に対する治療法について教えてください

痛みに対しては消炎鎮痛剤を処方し、特に夜間痛がある場合はオピオイド系の鎮痛薬を使うことがあります。断裂の大きさや筋力などの状態は人それぞれなので、その人に合わせた治療内容を考えます。肩の動きが悪い人に対しては肩が固まらないようにリハビリを行い、肩甲骨の動きが悪く痛みが出ていればチューブを使ったストレッチなども行っていきます。
痛みによって、日常生活にどれだけ障害があったり、ご本人がやりたいことができなかったりする時に手術を検討される人もおられます。しかし、ご高齢で断裂の範囲が狭く痛みが軽ければ、手術を行わないことがあります。一方、若い人の場合は、できるうちに治療を受けておかないと状態がかなり悪化することがあるので、積極的に手術を勧めることがあります。

腱板断裂で行われる修復術や再建術について教えてください

上方関節包再建術

上方関節包再建術

手術にはいくつかの方法があります。その1つに一次修復と言って、腱板の切れた箇所を元の位置に戻して縫い合わせる方法があります。以前は肩を大きく切る方法で行われていましたが、現在は肩の周囲の⽪膚を5mmくらい数か所切り、関節鏡を用いた鏡視下腱板修復が一般的に行われています。また、一次修復が難しい場合は、脚の筋膜を移植して腱板を再建する大腿筋膜パッチ法という手術が行われることがあります。
さらに腱板がかなり退縮している場合には、上方関節包再建術という、大腿筋膜を肩甲骨と上腕骨につなぎ合わせ残った筋肉で肩を動かせるようにする手術が行わることがあります。このように、患者さんの状態に合わせ、できるだけ低侵襲な関節鏡手術を選択することで、患者さんご自身の肩関節が温存できる手術が一般的に行われています。

人工肩関節について教えてください

肩で使われる人工関節には3つのタイプがあります。1つは骨折の治療などで使われる骨頭置換タイプです。
2つ目は全人工肩関節です。変形性肩関節症や関節リウマチなどが原因で関節が変形した人に用いられます。
人工関節の形状が肩関節の構造と似ているので、周りの筋肉が正常であれば腕を挙げられるようになりますが、腱板が機能していないと適応になりません。3つ目は、現在、主流となっているリバース型人工肩関節です。
リバース型人工肩関節は、修復や再建できない腱板断裂性の肩関節症に対する治療法で、最近では上腕骨の近位端骨折にも使用できるようになりました。これまでは、そのような骨折に対して骨頭置換が行われていましたが、リバース型が使えるようになってからは腕を挙げられる人が増えるなど術後成績が改善しました。
ただし、リバース型人工肩関節は、日本ではまだ長期成績が乏しく、現在は原則65歳以上の人が適応とされています。また、ある程度可動域に制限がでますが、これまで治療を諦めていた人にとっては、希望が持てる治療選択肢だと思います。

全人工肩関節

全人工肩関節

リバース型人工肩関節

リバース型人工肩関節

リバース型人工肩関節にはどのような合併症が考えられますか?

一般的なリバース型人工肩関節置換術による早期の合併症としては、感染症や脱臼のほかに神経麻痺が起こる可能性があります。手術時間が長くなればなるほど合併症リスクが高まりますが、使用する機器の進歩や手術時間をできるだけ短縮することで合併症リスクが軽減しています。長期的には人工関節が緩む場合もありますが、人工関節そのものの進歩や手術方法の進化によってそのリスクも減っています。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop