人工ひざ関節置換術とは
人工膝関節置換術とは、変形性膝関節症や関節リウマチによって傷んで変形した膝関節の表面を取り除いて、人工関節に置き換える手術です。
人工関節は、関節の滑らかな動きを再現できるように、大腿骨部(だいたいこつぶ)・脛骨部(けいこつぶ)・膝蓋骨部(しつがいこつぶ)の3つの部分からできています。大腿骨部と脛骨部の本体は金属製ですが、脛骨部の上面と膝蓋骨の表面は耐久性に優れた硬いポリエチレンでできていて、これが軟骨の代わりになります。
使用する人工関節は障害の程度によって異なります。障害の程度が比較的軽い場合は骨の表面だけを削って置き換えますが、膝関節の破壊が進み、障害が著しい場合には、すり減った骨を補充するために複雑な膝関節部品が必要になります。
人工膝関節置換術の流れ
統計データ
人工膝関節置換術は日本国内で40年以上前から行われている手術です。整形外科では一般的な治療法として定着し、手術件数は年々増えており、今では年間9万例以上にも上ります。また、厚生労働省の公開データによれば、人工膝関節置換術を受けられる患者さんの平均年齢は75歳と、比較的高齢の方が手術を受けられていることがわかります。
※厚生労働省 第8回NDBオープンデータ(レセプト情報・特定健診等情報データベース)
令和2年4月 - 令和3年3月診療分
日本における人工膝関節置換術 年間症例数
※厚生労働省 第1-8 回NDB オープンデータ(レセプト情報・特定健診等情報データベース)
平成25年4月 - 令和3年3月診療分
最小侵襲(しんしゅう)術(MIS:エムアイエス)
療部位の切開(侵襲)の程度をなるべく小さくし、患者さんの体にかかる負担を少しでも軽くしようという手術手法を、最小侵襲術あるいは低侵襲術といいます。人工関節置換術における最小侵襲術では、皮膚を切開する長さを従来よりも小さくする、筋肉を切らずに温存するといった方法で、患者さんにやさしい手術の実現を図っています。
注記
最小侵襲術は、患者さんの容態や症状等によっては行えないこともあります。また、最小侵襲術による効果は必ずしも確約されているものではなく、期待できるという範囲に留まっているものであることをご理解ください。最小侵襲術を希望される場合には、適応や効果について、担当の医師と十分にお話されることをお勧めいたします。
人工膝関節部分置換術
人工関節置換術には、お皿の骨の部分など膝関節の一部を人工関節に置き換える部分置換手術という手術法もあります。
人工膝関節部分置換術の流れ
膝関節全体を人工関節に置き換える全置換術に対し、部分置換術は、膝関節の傷んでいる側だけを人工関節に置き換えるもので、関節の片側の軟骨のみがすり減っていて反対側のすり減りが少ない場合など、傷みの進行が比較的初期の方が対象になります。部分置換術では通常の人工関節に比べ約半分の大きさの人工関節を用いるため、一般的に皮膚の切開や骨の切除量が少なくなります。
人工膝関節部分置換術適用のめやす
- 膝をしっかりのばすことができる
- O脚やX脚の程度が軽い
- 膝の内側もしくは外側のみが痛い
- 関節リウマチではない
- 高度の肥満ではない
- 膝の靭帯には異常がない
注記
部分置換術は、患者さんの容態や症状によっては行えない場合があります。人工膝関節部分置換術を希望される場合には、適応や効果、リスクについて、担当の医師と十分に話しあってください。