人工関節コラム

コラム 27
人工関節メーカーに伺いました

担当者

人工関節メーカー ジンマー バイオメット社
アメリカ本社と日本法人の担当者

一度手術をすると長いつきあいとなる人工関節ですが、実際に人工関節手術を受けた方でも人工関節の実物を目にする機会は少ないものです。
今回は、大切な体に入れる人工関節は、どんな素材でつくられているのか、本当に安全なのか、といった疑問を人工関節メーカーの担当者に伺いました。

人工関節はどんな素材でできているの?

医療用に特殊加工された金属素材やポリエチレンを採用

メーカーによっても、人工関節のタイプによっても、また人工関節のどのパーツかによっても異なりますが、チタンやコバルトクロム合金(こばるとくろむごうきん)、ステンレスなどの金属素材の合金やセラミックス、ポリエチレンなどが一般的です。
より細かく説明すると、一例ですが、人工股関節では、固定が重要な直接骨と接する部分には骨との親和性のよいチタン合金を、関節面としてこすれあう部分は摩耗に強いコバルトクロム合金(こばるとくろむごうきん)とポリエチレンを組み合わせて使う、といった具合です。

各パーツに使われる素材の一例

コバルトクロム合金は、もともとは航空機開発から生まれた素材で、ジェットエンジンのシリンダーなどにも使われるほど摩耗に強いものです。医療用としては、歯科分野でも多く利用されています。
ポリエチレンはもっと身近で、コンビニなどでもらう買い物袋が代表例です。もちろん、人工関節で用いられるのは医療用で、特に摩耗に強い超高分子量ポリエチレン(ちょうこうぶんしりょうぽりえちれん)が使われています。

体内に入れるものですが、本当に安全なのでしょうか?
また、体内で腐食する心配はありませんか?

腐食防止処理を施し、国際基準に基づいた高い安全性

人工関節は、特に安全性が重要で、各メーカーとも細心の注意を払っています。ジンマー バイオメット社では医療機器品質管理システムに基づいた開発・製造を行っています。また、製造工程の最終段階では、洗浄ならびに滅菌処理をしており、処理後はすべての微生物やウイルスが生存する確率が100万分の1以下という、国際的に採用されている無菌性保証レベルで実施されています。
人工関節の金属の部品については、製造工程で不動態化処理が施されます。この処理は、金属がそれ以上酸化しない安定した状態へと加工することで、体内での腐食を防ぐためのものです。

金属の人工関節なので重いのではないでしょうか?
体に入れた際に重さを感じませんか?

実際の骨とほぼ同じ質量の人工関節

確かに、人工関節を手に持つと、ずっしり重たいと感じられるかもしれません。しかし、実際には、私たちの体内にある骨とそれほど変わらない重さなのです。
骨の中には血液や骨髄(こつずい)が通っていますし水分も含まれているので、実際には結構な重さがあります。また、特に股関節や膝関節は「荷重(かじゅう)関節」と呼ばれ、体重や外部からの重さを支える働きのある関節です。こうした関節は、人工関節が入っても実際に重さを感じることはほとんどないのです。

人工関節の多くは欧米で製造されていますが、日本人の体型や骨格に合う製品なのでしょうか?

多数の症例データに基づいた、日本人に合った製品を開発

製品開発

人間の基本的な骨格は、欧米人も日本人も変わりませんので、同じ人工関節が使えます。欧米人の体格に比べると小柄な日本人に適した小さいサイズをつくることもあります。
一方で、より日本人の体格や生活スタイルに適した人工関節の開発も行っています。例えば、床での生活が基本の日本では、特に膝関節においては「より深く曲がる」ことが求められます。
日本向けの製品開発では、多くの整形外科のドクターの皆様にご協力いただき、膨大な量の日本人の症例データを蓄積しています。それらを分析し、アメリカの開発チームなどの関連部署と入念なミーティングを行い、日本人に合った製品開発や機能改善を実践しています。

金属(人工関節)と骨は、どのようにして固定するのですか?

特殊なセメントの利用か、骨と人工関節の直接結合

方法としては2つあります。ひとつは骨セメント(こつせめんと)と呼ばれる固定剤を使う方法です。骨と人工関節の隙間に骨セメントを使用して固定します。
もうひとつは、骨セメントを使わずに直接骨と人工関節を密着させる方法です。チタン合金は、生体組織との親和性が高い、つまり骨となじみやすい金属なのです。人間の体は代謝を繰り返しており、骨も成長します。人工関節と骨が密着していると、次第に骨の組織が成長して人工関節としっかりと結びつきます。このタイプの人工関節は、骨との接する表面は触るとザラザラした感触で、無数の微細な空洞のある特殊な加工(気孔(きこう)質加工)が施されています。この空洞に骨が入り込んで成長し、時間が経つにつれて骨と人工関節がしっかりと結合するわけです。
どちらの方法を採用するかは、それぞれの患者さんの年齢や骨の状態などさまざまなことを考慮して、ドクターが最良と考える方法が選択されています。

固定方法

人工関節を日常生活で使う上で気を付けることなど、
メーカーとしてのアドバイスはありますか?

医師の指示に従い、定期健診も怠らないこと

担当医師からの指示を守っていただくことが第一です。また、1年に1-2回は、医師から指示された定期検診を必ず受診してください。万が一、何か問題が起きたとしても早期に発見でき、人工関節をより長持ちさせることが可能です。
また、気を付けるということではありませんが、飛行機などに乗る際の金属探知器検査に人工関節が反応することがあります。これについては、各病院が発行する人工関節を使用していることを証明するカードなどを提示することで対処できます。カードの発行については、各病院でお尋ねください。
また、市区町村によっては、独自の制度などを設けているところもあるようです。詳しいことは、お住まいの地域の担当窓口に問い合わせてみてください。

注意書き

将来に向けて、どのような人工関節が研究・開発されていますか?

より高品質で、快適な日常生活を送れる人工関節へ

人工関節がこすれ合う関節部分(摺動面)の摩耗をいかに抑えるかは、メーカーが抱える課題のひとつです。より摩耗に強い次世代のポリエチレンや、ダイヤモンドを用いた素材の実用化に向け、研究・開発が進められています。
また、できるだけ動きが制限されることなく関節の可動範囲を広くするために、さまざまな工夫が行われています。ひざの人工関節の場合、ひざをより深く曲げた時にも安定感のある、自然な膝関節の動きを再現できるようなデザインや、また、患者様一人ひとりの骨の形態に合わせて、人工関節を設置するシステムの開発が進められています。
また、手術時の切開や、筋肉などへの影響を少なくする技術(MIS)も進化しています。関節の痛んだ部分のみを入れ替え、骨や筋肉など自分の元々の組織をより多く温存する部分置換なども多く行われるようになってきており、手術後の早期社会復帰にも貢献しています。
これからも、人工関節を通じて多くの方々に、より快適で質の高い生活を提供できるよう、高品質な人工関節を提供し、人工関節についての正しい知識を持っていただけるように努力を続けたいと思います。

※治療内容や効果は個人によって異なります。患者さんの個々の症状にあわせた治療法については、担当の先生と十分に相談・確認して決定されることをお勧めします。

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