人工関節コラム

コラム 28
転倒しないための『靴選びのポイント』

徳重 隆さん1

徳武産業株式会社 福祉用具専門相談員
徳重 隆 さん

高齢者や骨がもろくなっている方が転倒してしまうと、股関節部(脚の付け根)を骨折してしまい、寝たきりになってしまうケースが多くみられます(大腿骨頚部骨折)。その治療としては人工骨頭置換術などの手術療法がありますが、何より大切なのは、日頃から転倒しないように心がけることです。そこで今回は、高齢者の足にやさしく、履きやすく、つまずきにくいケアシューズ*「あゆみシューズ」を製造・販売されている徳武産業株式会社の徳重さんに、高齢者の日常生活における歩行時の注意点や、高齢者に合った靴の選び方についてお話を伺いました。
*ケアシューズとは、安全で快適な歩行をサポートする靴のことです。

年齢を重ねると、歩き方はどう変化するのでしょう?

A 足が上げづらくなり、つまずきや転倒が起こりやすくなる

加齢に伴って筋力が低下するため、若いころと比べると歩行時に足のつま先が上がりにくくなります。足の裏はアーチ状になっていますが、加齢によって次第に腱が変形したり断裂するとそのアーチが崩れ、いわゆる扁平足(へんぺいそく)になってくるのが一般的です。
さらに、腰が曲がって前かがみの姿勢になる、歩幅が狭くなり腕の振りも小さくなる、また、自分では足を上げているつもりでも実際にはあまり上がっておらず、すり足のように歩くといったことも、加齢による歩き方の変化の特徴と言えるでしょう。
人によっては、ひざや股関節、腰などに痛みを感じ、その痛みを軽減しようとして歩き方が変わってしまうケースも少なくありません。
こうした歩き方によって、歩行時の身体のバランスが取りづらくなり、つまずいたり転倒したりする危険性が高まってしまうのです。

年とともに変わる歩行の変化

高齢者の転倒は、どのような所で起こりやすいのでしょうか?

A 転倒・転落によるけがの5割は住宅内で発生

東京消防庁の調査(※1)によると、高齢者の日常生活における事故のうち約8割がころぶ事故によるものだそうです。
東京都の調査(※2)でも、高齢者の約4割が1年間に1回以上の転倒や転落の事故を経験し、その半数がケガを伴っているという結果が出ています。しかも、それらの転倒・転落は、住宅内で起こるケースが5割を占めているのです。
室内で起こる転倒・転落では、スリッパを履いていた事例が多数報告されています。例を挙げると、「自分で自分のスリッパを踏んで転んだ」「階段の昇降時にスリッパが脱げて転倒した」などです(※3)。
屋外や外出先での転倒・転落のケースでは、つっかけやサンダルを履いていた事例が多くみられますし、普通の靴を履いていても、歩道の段差でつまずいて転んだというケースもあります。
さらに、特に年配の方では、転んだ際に「手をついたら腕の骨が折れた」「大腿骨(太ももの骨)を骨折した」といった大ケガにつながる場合もあるので、普段の履物にも気を使うことが望まれます。

転倒・転落の5割は住宅で起きてます!

※1 東京消防庁 平成29年中の高齢者の事故による救急搬送状況
※2 資料提供:東京都生活文化局消費生活部 平成13年度高齢者危害危険情報分析調査より
※3 資料提供:東京都生活文化局消費生活部 平成24年2月「シニア世代に多い事故(報告書)」より

リハビリや介護などで活躍している「ケアシューズ」の特徴を教えてください

A 軽くてつま先が上げやすく、脱ぎ履きしやすいこと

つま先部分が反り上がった靴

まず、一般的な靴に比べて軽いことですね。軽ければ足を上げやすくなります。さらに、高齢者の歩き方を考慮し、すり足で歩く方でもつまずきにくいよう、つま先部分が持ち上がった反り上がりのある設計がされています。

開口部が大きい靴

歩きやすさに加えて、開口部が広く、脱ぎ履きがしやすいことも特徴です。高齢になると、靴の脱ぎ履きがしづらいという方が増えます。足を差し込む間口が大きく開いて履きやすく、歩行時には脱げにくいよう面ファスナーで簡単に足を固定できるタイプがケアシューズの主流です。こうした作りは、靴を履く本人だけではなく、高齢者・要介護者の介助者にとっても履かせやすい構造となっています。
長時間履いていても足が痛くならないよう、柔らかい素材が用いられていることも特徴のひとつです。

歩行に適した靴選びについて、アドバイスをお願いします

A 自分の足の形状に合った、歩きやすい靴を選ぶ

ケアシューズの特徴と重なるのですが、軽くて、開口部が広く、面ファスナーで調整できるタイプであること。つま先部分が丸みを持った形状で、履いていて圧迫を感じないものを選ぶとよいでしょう。

徳重 隆さん2

特に高齢者の中には、足に腫れやむくみのある方や外反母趾に悩まれている方もいらっしゃいます。普通の靴だと足の甲の部分(高さ)や幅がきつく感じて、つい大きいサイズを選んでしまいがちです。しかし、それではフィット感がなく、かえって歩きづらくなる。つまずきや転倒の原因にもなりかねません。一般的には、靴を履いてつま先に5~10mm程度の余裕(捨て寸)があると、歩行しやすいと言われています。自分の足に合った、歩きやすい靴を選んでいただきたいですね。

靴
高齢者向けの靴選びのポイント
自分が履いてみて軽いと感じる(重いと感じない)
靴を履いた状態でつま先に5~10mm程度の余裕があるもの
つま先部分が反り上がった形状
開口部が広く、脱ぎ履きしやすい
素材が柔らかい
かかとがしっかりしている(固定される)

左右で足の大きさが違うため悩まれている方も多いようですが・・・

A 足の状況に合わせた購入をおすすめします

片足だけむくみがある、片足に装具を付けているなど、人によって左右の足の状態は異なります。また、歩き方によって片方の靴底だけが早く擦り減ったり傷んだりすることもあります。 以前は、左右で足のサイズが違えば、それぞれのサイズの靴をひと揃えずつ買わなければなりませんし、片方だけが傷んだ場合も、その片方だけをバラで購入することはできませんでした。 しかし現在は、左右のサイズ違いでの販売や片方だけの販売が日本の靴業界ではスタンダードになっています。

ケアシューズのニーズは?
また、どこで買えるのでしょうか?

A リハビリ時や施設内での利用ニーズが高い

徳重 隆さん3

多いのは、高齢者向けの介護施設や病院のリハビリ施設などでの利用ですね。不安定な歩行や歩行時の転倒を予防するために、ケアシューズが採用されています。
ケアシューズは、全国の介護事業者様(介護ショップ)や一部の病院の売店、介護施設での紹介販売などで購入できます。最近では百貨店や量販店の介護用品コーナーといった店舗での取り扱いも増えつつあります。また、通信販売やネットショップで購入されるケースも多くなりました。
http://www.tokutake.co.jp/shop/(外部リンク:ケアシューズあゆみ)>
リハビリ中の方や退院された方が、自宅の室内でスリッパの代わりとしてルームシューズタイプのケアシューズをお求めになることも増えていますね。

インタビューを終えて

人工関節置換術を受けた後のリハビリ時はもちろん、高齢者の日常生活での転倒防止として、普段から歩きやすいシューズを着用する重要性を再認識しました。
ひざや股関節に痛みを抱えていらっしゃる方の多くは、痛みを軽減するために歩き方に変化が生じます。その結果、転倒 ⇒ 骨折 ⇒ 入院 ⇒ 手術 ⇒ リハビリ ……といった展開になるケースもあります。普段の履物に目を向け、まさに「足元を見直す」ことも、高齢者が健康で快適な生活を送るためのポイントのひとつと言えるでしょう。

徳武産業株式会社ホームページ
http://www.tokutake.co.jp/(外部リンク)

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